2025年4月29日火曜日

インデックス投資は勝者のゲーム:ジョン・C・ボーグルの教え

 インデックス投資は勝者のゲーム:ジョン・C・ボーグルの教え

     バンガード・グループの創業者であるジョン・C・ボーグル氏の著書『インデックス投資は勝者のゲーム』に基づき、インデックスファンドを中心とした投資術が解説されています。

インデックスファンドとは何か

    インデックスファンドは、日経平均やS&P500といった特定の株価指数に連動するように運用される投資信託です。市場全体の動きに合わせることを目指し、アクティブファンドのように市場平均を上回る運用を積極的に狙うわけではありません。

インデックスファンド vs アクティブファンド

    アクティブファンドは、プロのファンドマネージャーが市場平均を上回る運用を目指しますが、実際には多くのアクティブファンドがインデックスファンドの成績を下回っています。また、アクティブファンドは調査や分析にコストがかかるため、信託報酬などの手数料が高い傾向にあります。一方、インデックスファンドは株価指数に連動させるため運用コストが低く、手数料も安く抑えられます。長期的な視点で見ると、手数料の差がリターンの差に大きく影響するため、低コストのインデックスファンドが有利となります。

優良なインデックスファンドの選び方

     インデックスファンドを選ぶ際には、信託報酬や買付手数料が低いものを選ぶことが重要です。わずかな手数料の差でも、長期で見ると大きな差となる可能性があります。

債券ファンドの活用とアセットアロケーション

    本書では、インデックスファンドと合わせて債券ファンドを保有することも推奨されています。債券は株式に比べて価格変動が小さいため、ポートフォリオに組み込むことでリスク分散の効果が期待できます。株式と債券の割合(アセットアロケーション)は、年齢やリスク許容度、目標とする資産額などによって慎重に決定する必要があります。若い世代や資産形成の初期段階では株式の比率を高め、目標額に近づくにつれて債券の比率を高めるのが一般的です。

プロのアドバイスについて

    安易にプロのアドバイザーに頼るのではなく、自分で投資について学ぶことの重要性が強調されています。手数料の高い金融商品や、不必要な売買を勧めてくるアドバイザーには注意が必要です。

長期投資の重要性

    インデックスファンドへの投資は、短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点でじっくりと資産を育てていくことが大切です。市場が低迷する時期でも、インデックスファンドを保有し続ける忍耐力が重要となります。

結論

    インデックスファンドを中心とした投資戦略は、多くの専門家も推奨する合理的な方法です。ただし、投資に絶対はなく、始める前には自分自身でしっかりと学ぶことが不可欠です。

チャールズ・エリスさんの著書「敗者のゲーム」についての解説

   ハーバードビジネススクールで最優秀MBAとなったチャールズ・エリスさんの著書「敗者のゲーム」について解説します。この本は、投資で失敗しない方法を教えてくれます。

   多くの人は根拠のない自信を持って投資を始めるものの、数ヶ月後、長くても数年後にはお金を減らしてしまいます。プロがひしめき合っている投資の世界に素人が入っていっても勝てません。プロと戦う以前に、自分のミスによって自滅してしまうことが多いのです。

    テニスのアマチュアがファインプレーをする前に、自分でボールをネットに引っかけたり、ラインの外に出したりするのと同じように、投資のアマチュアも株の選択や売買のタイミング、手数料や税金などのコスト管理を怠るなど、自分のミスで負ける人がほとんどです。

    だからこそ、できるだけミスしない方法で投資をすることが大事であり、その方法がインデックス投資なのです。インデックス投資の鉄則を知りましょう。

    ミスを減らすには、インデックス投資をするだけでいいのです。インデックス投資とは、市場全体に投資して平均点を獲得していく投資のことです。インデックス投資の代表的なものに、S&P500や日経平均株価などがあります。S&P500はアメリカを代表する500社全ての平均値を、日経平均株価は日本を代表する225社の平均値を表しています。S&P500が上がればアメリカの経済市場全体が強く、下がれば悪くなっていることを示します。国を代表する素晴らしい会社に幅広く投資するのがインデックス投資であり、これはミスを大幅に減らせます。投資ではミスをしないことが何よりも大事なのです。

   インデックス投資は、1つの会社に投資するよりも多くの会社に幅広く投資するため、大幅に上がることも下がることもありません。手数料も安く、頻繁に売買しないので税金もかかりづらいというメリットもあります。

   国の経済は基本的に毎年良くなっていくものです。30年前と比較しても、AIやスマホ、SNSなど多くの魅力的な商品が生まれ、生産性は向上しました。世界の人口もまだ増加しています。アメリカの経済を表すS&P500は、細かく上下しながらも長期的に見ると右肩上がりになっています。

    インデックス投資は派手ではありませんが、ミスを最小限にしつつ、国の経済成長に合わせて自分のお金を地道に増やせる方法なのです。結局のところ、ミスをしないためにはインデックス投資をするだけでいいのです。

    驚くべきことに、プロの投資家でさえインデックス投資にはなかなか勝てません。投資のプロのほとんどが、インデックス投資のパフォーマンスを下回っています。15年以上という長期で見ると、インデックス投資よりも良い結果を出しているプロの投資家は全体の10%以下に過ぎません。つまり、90%以上のプロはインデックス投資に負けているのです。時間が経てば経つほど、インデックス投資よりも良いパフォーマンスを出せる投資家の数は減っていく傾向にあります。

   したがって、プロではないアマチュア投資家が自分で考えて投資をして勝とうとするのはほぼ不可能です。個人がプロに勝とうとするのは非常に困難なのです。たまたま勝てることはあっても、数十年という長い期間投資を続けると、最終的にはインデックス投資に軍配が上がります。ですから、プロでもインデックス投資には勝てないという事実を認識することが重要です。

    投資で失敗しないためには、手数料が低いことも非常に重要です。手数料は投資をする上で確実に出ていくお金だからです。プロに運用してもらう場合は手数料が高くなりがちです。一方、インデックス投資は機械的に運用されるため信託報酬が安く済みます。プロに運用を任せる場合、信託報酬は年に約1%程度かかることが多いですが、インデックスファンドの場合は0.09%や0.05%といった低い水準のものもあります。例えば、100万円を投資している場合、プロに任せると毎年1万円の手数料がかかるのに対し、インデックスファンドの場合はわずか500円から900円で済むのです。

    さらに、プロに運用を任せると、頻繁な株の売買によって税金が発生したり、インデックス投資よりも良い結果を出さなければ存在価値がないため、やや攻めた投資になりがちです。これは、法定速度より10kmオーバーで運転するようなもので、事故のリスクが高まります。投資は数十年という長い期間続けるものだからこそ、手数料が安いことと、リスクの低い運用をすることが大切なのです。

    投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットも、手数料の低いインデックスファンドに投資することが最善の方法だと明言しています。銀行が勧めてくる投資商品は手数料が高いことが多いので注意が必要です。結局、投資で失敗しないためには、手数料の低いインデックス投資をすることが賢明な選択と言えるでしょう。

    インデックス投資は手間がかからないという点も大きなメリットです。自分で調べて投資をする場合、銘柄の値動きを頻繁に確認したり、企業の経営状態や財務状況、新商品の情報をいち早く手に入れる必要があります。しかし、ほとんどの人にはそのような時間はありません。特に会社員は、プロの投資家と比べて考える時間や調べる時間が限られています。

    その点、インデックス投資は、個々の会社の決算を見る必要もなく、長い目で見ると株価は右肩上がりになる傾向があるため、頻繁に株価をチェックする必要もありません。人生には投資以外にも大切なことがたくさんあります。企業の調査や決算などに時間を費やすよりも、本業や副業、家族や趣味などに時間を使った方が有意義でしょう。本業などでしっかり稼ぐことができれば、投資に回せる金額も増えます。タイムパフォーマンスという観点から見ても、自分で投資するよりもインデックス投資を選択する方が賢明と言えるでしょう。

   自分で投資することとプロに運用を任せることのリスクを考えると、インデックス投資がいかに優れた方法であるかが理解できるはずです。

   では、具体的にインデックス投資で何に投資するべきかについて説明しましょう。おすすめなのは、アメリカ株式か全世界株式のどちらかに投資することです。アメリカも全世界も人口が増え続け、経済成長を続けているからです。アメリカは世界経済の中心であり、毎年勢いのある企業が次々と現れる土壌が整っています。一方、全世界株式は、全世界の優秀な企業の株に幅広く投資するものです。全世界と言いつつも、その内訳は約6割がアメリカの企業、約3割がアメリカ以外の先進国の企業、そして約1割が新興国の企業となっています。つまり、どちらに投資しても大きな違いはありません。

   ただし、20年30年後もアメリカが経済の中心であるとは限りません。また、全世界株式の方が信託報酬がわずかに安いというメリットもあります。したがって、やや積極的な運用を目指すならS&P500、安定的な運用を目指すなら全世界株式、特に「オールカントリー」という投資信託に投資するのが良いでしょう。日本の株式市場は少子化というデメリットを抱えています。以上の理由から、S&P500かオールカントリーのどちらかの投資信託に投資することをおすすめします。

   次に、インデックス投資を成功させるためにやるべきことを説明します。まず、最も重要なのは毎月決まった金額を積み立て投資することです。いつ暴落が来るかは誰にも予測できませんし、タイミングを見計らっている間に株価がどんどん上昇して投資の機会を逃してしまうことも多いのです。世界やアメリカの株価は、細かく上下を繰り返しながらも、長い目で見ると右肩上がりになっています。したがって、今日買おうが2、3ヶ月後に買おうが、15年後には株価が上昇している可能性が高いと言えます。つまり、いつ買っても良いと言えるでしょう。

    しかし、1ヶ月後に暴落が来る可能性も否定できません。そこで重要になるのが、毎月決まった日に決まった金額を投資し続けるという「ドルコスト平均法」です。この方法であれば、株価が低い時には多くの株数を購入でき、株価が高い時には少ない株数を購入することになるため、平均購入単価を抑える効果が期待できます。例えば、毎月1日に株を3万円分購入するといったルールを決めて、それを継続するのです。投資できる金額は5万円でも1万円でも構いません。この積み立て投資を続けることで、気づいた頃には資産が増えているはずです。

    インデックス投資を成功させるための二つ目の重要なポイントは、大暴落が来ても決して売らないことです。株価が大きく下落した時に、恐怖に駆られて売ってしまうのが最もやってはいけないことです。前述の通り、アメリカや世界の株価は、様々な出来事があっても、20年後には上昇している可能性が高いのです。したがって、インデックス投資は長期的な視点で続けることが何よりも重要です。常に市場に居続けること、これが成功の秘訣です。もし不安を感じるなら、それは投資している金額が自分のリスク許容度を超えているのかもしれません。

    投資の世界では、過去72年間を振り返ると、わずか5日間だけが非常に高いリターンをもたらす日だったというデータがあります。これは「稲妻が輝く瞬間」とも呼ばれます。そして、驚くべきことに、このような日は大暴落の後にやってくることが多いのです。世界大恐慌やリーマンショックのような歴史的な暴落の後には、大きな上昇が待っているのです。ドルコスト平均法で積み立て投資をしている人は、このような暴落時こそ、むしろ積極的に株を購入するくらいの気持ちを持つべきです。インデックス投資家にとって、暴落は株のバーゲンセールであり、株を安く購入できる絶好の機会なのです。ですから、大暴落が来ても決して売ってはいけません。

   そして、インデックス投資においては、基本的に債券は必要ありません。株式、つまり株を買うだけで良いのです。債券とは、国や企業などが資金を調達するために発行する借用証書のようなもので、私たち投資家から見れば、国や企業にお金を貸してあげることになります。債券は株式に比べて金利という形で安定した収益が期待できますが、株のように大きく値上がりすることは稀で、下落リスクも低い、つまりローリスク・ローリターンの金融商品です。

   資産運用の本の中には、株50%と債券50%という比率で安定的な運用を目指すことを勧めるものもありますが、長期投資においては、株式と債券のバランスを取るという考え方は古いと言えます。大暴落が来ても株や投資信託を売らないという前提であれば、あえて債券を組み入れてポートフォリオ全体の変動リスクを和らげる必要はありません。なぜなら、長期的に見れば世界の経済は成長していく可能性が高く、そのような状況下では、債券を保有していると、株式のみで運用した場合と比較して、資産を効率的に増やすことができないからです。

    債券が有効なのは、むしろあまり長生きしない高齢者の方が、安定的に資産を運用し、その利息で余生を楽しむといったケースでしょう。もちろん、将来的に世界経済が長期的な不況に陥るような事態になれば、債券が再び注目される時代が来るかもしれません。しかし、現状のように世界の人口が増加し、経済も成長している状況においては、債券を購入するくらいなら、その資金で株式を購入して資産を増やしていく方が賢明な判断と言えるでしょう。ですから、基本的には債券は必要なく、株式100%で運用するのが良いのです。

    最後に、今日の授業のまとめです。ほとんどのアマチュア投資家は、自らのミスによって投資の世界から退場していきます。だからこそ、できるだけミスをしない方法で投資をすることが重要であり、その最適な方法がインデックス投資です。驚くべきことに、プロの投資家でさえインデックス投資に勝つことは難しいのです。15年以上の長期で見ると、インデックス投資よりも高いリターンを上げているプロの投資家は約10%以下に過ぎません。

    投資で失敗しないためには、手数料の低さも重要な要素です。インデックス投資は、アクティブ投資と比較して手数料が低く、頻繁な売買も不要なため、無駄な税金もかかりません。また、インデックス投資は、個々の企業の株価を頻繁に確認したり、企業の決算情報を細かく分析したりする必要もありません。

    インデックス投資で推奨される投資先は、S&P500や全世界株式(オールカントリー)といった投資信託です。インデックス投資を成功させるためのポイントは、市場のタイミングを計ろうとせずに、毎月決まった金額を投資し続けること、そして、大暴落が来ても決して売らないことです。そして、長期的な資産形成においては、債券は基本的に必要なく、株式100%で運用するのが良いでしょう。

   インデックス投資でお金が増えてくると、もしかしたら個別株投資にも興味が出てくるかもしれません。しかし、今日のお話を聞いて、改めて気を引き締めてください。インデックス投資は、確かに面白みに欠ける部分もあるかもしれませんが、お金が増えているのはインデックス投資のおかげであり、決して自分の投資の才能によるものではないのです。そのことをしっかりと心に刻み、決して調子に乗らずに、淡々とインデックス投資を続けていくことが、長期的な資産形成の成功への道なのです。